土作りの違いと育て方のコツ

デイ・ケア園芸活動

私たちの、立っている、土壌は、岩石が長い時間をかけて風化してできた、”無機質の粒子”と、落ち葉や木の皮などが分解されてできた”有機物”が混ざり合ってできています。さらに、その隙間には、”水”や”空気”が入り込み、また、”微生物”や”小さな生き物”が活動していて「ただの土」ではなくて、「生きた土」として、存在しています。

第0章 土壌の性質を知ろう

野菜を育てる前に、まず知っておきたいのが、「土そのものの性質」です。

土性(どせい)

土壌には、粒の大きさで、名前がついています。まず、土壌を構成する、無機質の粒子のお話になります。

  1. 砂土(さど):砂が多いです
  2. 壌土(じょうど):中間の性質。砂土と埴土が混ざっています
  3. 埴土(しょくど):細かく重たい粘土質です

1.と3.について、特徴を説明すると、

  • 砂土は排水性がよく、根腐れしにくい反面、肥料成分が流れやすく、頻回な施肥(せひ:肥料を与えることです)が必要となります。ただし、肥料成分が土中に長く残りにくいため、成分が偏ったまま蓄積するリスクは低い土性でもあります
  • 反対に、埴土は保水性、保肥力が高く、肥料が効きやすい反面、成分が偏ると排出、修正に時間がかかります

ということになります。

異なる性質をもっている、1.砂土、3.埴土、ですが、どちらが優れているというものではありません。そもそも、土壌は、そこに、その性質を持って、存在していますので、それぞれの土性を理解し、特性に合った管理を行うことで対応していきましょう。

注目してみるべき3つの性質

物理性

空気や水がきちんと通る性質を保っているかを見ます。踏み固められたり、土壌に含まれた有機物が分解されて少なくなってくると、無機質の粒子の間が詰まってきます。すると、空気や水が通りにくくなってきて、状態が悪くなっていきます。
物理性の改善として代表的なのが”中耕”です。”中耕”は、追肥と併せて行われることも多いのですが、土に鍬を入れて根を傷つけないように表面をほぐし、空気や水の通り道を回復させる作業です。”中耕”を行うと、肥料を増やしていなくても作物が元気になることがあります。
一見すると固そうに見える果樹園の土にも物理性は重要です。果樹園ではホールディガーなどの機械を使い、幹から離れた根の少ない位置に垂直に大きな穴を空け、通気性や排水性の改善を図ることがあります。そこまでしてでも、やるべき課題である物理性。物理性は目に見えにくく、何とかなるだろうと、後回しにしてしまいがち(私自身がそうなのです)なのですが、非常に重要な土壌の性質なのです。

果樹園で活躍ホールディガー」

化学性

栄養成分の量や、酸性、アルカリ性の度合いなどを見ます。栄養成分は、植物が生育するために、いくつかの種類が必要となりますが、土壌の中で、そのバランスが偏っていると、作物の根から吸収しにくい栄養成分がでてしまうことがあります。また、酸性の土壌を好む作物などもあります。化学性に関しては、pHや栄養成分は試薬や簡易キットなどで測定が可能で、家庭菜園でも取り組める内容です。管理や調整の方法も多く、数値をもとに対策が進められますのでやり込みやすいところでもあります。しかし、化学性だけを整えても物理性や生物性を伴わなければ土は力を発揮できません。違う理由で課題に直面することになりますので、注意が必要です。

キットで測れる「化学性」

生物性

微生物やミミズなどが活動できているかを見ます。化学性で触れた栄養成分は、化成肥料によってその成分のみを投入することもありますが、牛糞や鶏糞などのたい肥として投入することもあります。その場合、それらは、微生物によって分解されて、根から吸収されることになります。また、無機質の粒子と、有機物が、微生物の働きによって結びつき、「団粒構造」と呼ばれるかたまりをつくります。この「団粒構造」があることによって土壌は、水や空気、栄養成分を適度にとどめることができます。生物性は、「生き物がいるかどうか」のその先に、土壌の物理性を向上させる機能ももっていますので、押さえておいていただくと、役に立つかもしれません。

みえないけど大切な「団粒構造」

まとめ

物理性、化学性、生物性の3つのそれぞれのバランスが保たれていることが、野菜の栽培には大切です。でも、なかなか難しいことも多い(私の個人的見解です)ので、やれる範囲でやりましょう。

第1章 プランター栽培は「土づくり」ではなく「土の選択」

プランターは”閉鎖系”です。

  • 微生物相が貧弱です:微生物の種類も数も少ない環境になっています
  • 雨に当たりません:雨ではなくて水やりで水分が供給されることが多いです
  • 虫がまわりに少ないです:虫を避けて設置されることが多いです
  • 根が伸びません:根の伸長がプランター内に制限されます

という特徴を持ち、土壌が外部の力で、混ぜられる”撹拌”が起きにくいです。

この特徴から考えると、
理論上は成立するはずの、「赤玉土+腐葉土+化成肥料+苦土石灰」が、実際には、微生物が少なく「団粒構造が壊れやすく再生しない状態」となりますので、物理性が大ピンチになる可能性が高いです。
「赤玉土+腐葉土+化成肥料+苦土石灰」に、ほうれん草の種をまくと、

  • 表層がすぐ乾く:団粒構造が乏しいためです。
  • 表面がクラスト化する:土が湿潤と乾燥を繰り返して、細かくくだけてしまい、土の表面が薄い膜のようになって固まってしまいます。その固さで発芽を抑制し、また、通気性を失わせて、種を弱らせます。
  • 胚軸が突き破れない:種が発芽するときに、まず、幼根(幼い根)が下に伸びます。その後、幼根と子葉(ふたば)の間にある茎である、胚軸が伸び子葉を押し上げることで、地上に芽が出てきます。しかし、土の表面が雨や乾燥によってクラスト化し、固くなっていると、胚軸の伸びる力では突き破ることができず、発芽できないことがあります。

このような理由から、種が発芽できない可能性があります。
私は、栽培コストをできるだけ抑えようという考えから、「赤玉土+腐葉土+化成肥料+苦土石灰」という配合で、ほうれん草の種を”プランター”にまいたことがあります。条件によって異なる場合があるとは思いますが、理論上成立する組み合わせであるにもかかわらず、体感的な発芽率が3割程度と低く、私自身は大失敗に終わったと感じています。結果として、コストを下げることよりも、「発芽段階で安定した環境を用意することの重要性を強く実感した」という苦い経験となってしまいました。ただし、数値はあくまで個人の実体験であり、播種時期や水管理、表層の状態によって大きく変わる点には注意が必要です。

物理性は、作物の栽培において、「発芽の最初の関門」でもあります。
もし、プランターで栽培される場合には、

  • 「自作ブレンド」よりも
  • 「市販の野菜用培養土(軽量、有機物多め)」の方が
  • 成功率が圧倒的に高い

と思われますので、市販の野菜用培養土の使用をおススメいたします。

第2章 露地は「雑でも育つ」が、それは、土がいきているから

露地栽培では、

  • 牛糞
  • 鶏糞
  • 化成肥料(窒素、リン酸、カリ、の3種を含む複合肥料)
  • 苦土石灰

という肥料を投入すると、大体育ちます。
その理由は、単純に、「土が”開放系”だから」という理由です。

“開放系”だから、

  • 雨が入る
  • ミミズが入る
  • 根が深く張る
  • 微生物が世代交代する

多少無理な施肥(せひ:肥料を与えることです)でも、日々訪れる自然現象と、土壌が持つ資源が作用して、何とかなります。まるで、土が、自力で帳尻を合わせているかのようです。

これは、プランターでは、起こりません。

第3章 作り続けると「土が死んでいく」現象の正体

何世代も作り続けていると、畑の土は、

  • 固い
  • 有機物が少ない
  • 見た目が”疲れている”

状態に変化してきます。これは、感覚ではなく、現象として現れます。
その理由は、

  1. 有機物投入量<有機物分解量=有機物が枯渇してしまう
  2. 耕起、踏圧による団粒破壊がおきてしまう
  3. 作物の根の単調化(同じ作物を作ることで、根の深さや広がり方が同じで、根でほぐされる土壌の範囲が同じになります)が起きてしまう

ことが、主なものになります。
そして、そこに、落ち葉をすき込んだとしても、回復しないのですが、それは、

落ち葉は、炭素Cが非常に多く、窒素Nが少ないため、C/N比が高い資材です。微生物は、炭素Cをエネルギー源として利用しますが、分解に必要となる酵素や細胞は、たんぱく質でできており、たんぱく質をつくるためには、炭素Cに加えて、窒素Nが必要なのです。

窒素Nは、空気中に78%も含まれているじゃないか、と思われる方もいらっしゃると思います。確かに、この空気中の窒素分子、N₂分子は、空気中に大量に存在しています。しかし、N2分子は窒素原子のN同士が3重結合により強力に結びたものになっており、植物や、微生物は、そのまま利用することができません。

空気中から窒素Nが土壌中に自然に供給される量はごくわずかで、実際の栽培の現場では、

  1. 肥料として窒素Nを補給する
  2. マメ科の植物を栽培して、根に共生する”根粒菌”の「窒素固定」の働きを利用する

の、どちらかが行われます。

ただ、肥料として窒素Nを補給した場合も、根粒菌のはたらきを利用する場合も、どちらを選択ししたとしても、ある程度の時間を要することは覚悟しなければなりません。

第4章 休耕は「サボり」ではなく「土への投資」

休耕とは、「作らないこと」ではなく、「土の回復プロセスを優先すること」です。

有効な土の休ませ方としては、

  • 何も作らない(最強)
  • 雑草に任せる
  • 緑肥作物(エンバク、クローバー)を栽培し、その後すき込む
  • 表層をいじらない

などがあります。

特に重要なのは、「耕さない勇気」です。

私自身も、「何とかなるだろう」と考え、牛糞、鶏糞、化成肥料、苦土石灰を使いながら作り続けていました。
しかし、土は次第に固く締まり、ガチガチの状態になっていきました。そこで改めて調べてみて、ようやく休耕という選択肢を受け入れることになりました。
休耕、つまり「作らない」という判断は、収穫量が「0」になってしまうため、思っている以上に勇気が要ります。少しは実るのではないかという淡い期待も、休耕の決断を鈍らせます。
もしかしたら、一度作り続けて失敗を経験しないと、休耕に舵を切れないという方もいらっしゃるかもしれません。

一方、プランター栽培では、土を入れ替えることで再び栽培を始めることができます。ここは、土の量が限られるプランター栽培の強いところと言えるかもしれません。

ですので、休耕という考え方は、主に、土を簡単には入れ替えることのできない、露地栽培において、継続的に栽培を行っていくうえでの、現実的な選択肢と言えるでしょう。

第5章 初めての方向けの結論

まとめます。

プランター栽培

  • 市販の野菜用培養土を使用しましょう
  • 土を自作する場合は、”遊び”や”実験”として取り組み、結果が伴わなくても心が傷つかないように注意しましょう

露地栽培

  • 最初は肥料で何とかなります
  • しかし、「作り続ける」と必ず限界がきます

土が固くなったら

  • 追肥では解決しません
  • 有機物でも回復しない場合があります
  • 回復を優先するのなら、休耕が最短ルートです

今後も、栽培に関する情報を提供してまいります。

▶たていわ病院ホームページへ

タイトルとURLをコピーしました