畑の水管理から考える、夏の水分不足と熱中症対策

健康情報・ヘルスケアTips

前回の記事では、夏の畑で育つ野菜の様子をご紹介しました。

カボチャや夏野菜が育っていく一方で、毎日のように欠かせないのが水やりです。夏の畑では、水の管理がとても大切になります。

水が少なすぎると、作物はしおれてしまいます。一方で、水が多すぎても、根がうまく呼吸できず、育ちにくくなることがあります。

つまり、畑では「水があればあるほど良い」というわけではありません。作物にとって使いやすい水分の範囲があり、その範囲を外れると、生育に影響が出てきます。

今回は、この畑の水管理から少し視点を広げて、人の体の水分不足や、夏場に注意したい熱中症対策について考えてみます。

土には、水分の目安があります

農業では、土の中の水分状態を見る考え方として「水分恒数」というものがあります。

専門的な内容ではありますが、考え方としては、土の中の水分をいくつかの段階に分けて見るものです。

たとえば、次のような段階があります。

  • 最大容水量
  • 圃場容水量
  • 生長阻害水分点
  • 初期しおれ点
  • 永久しおれ点

最大容水量は、土のすき間が水でいっぱいになっているような状態です。水は多いのですが、作物にとっては必ずしも良い状態とは限りません。

圃場容水量は、余分な水が抜けたあと、土が水を保っている状態です。作物が水を利用しやすい状態として考えられます。

そこからさらに水分が少なくなっていくと、生育に影響が出始めます。これが、生長阻害水分点です。

さらに水分が不足すると、作物はしおれ始めます。最初は水を与えることで回復する場合もありますが、限界を超えると、回復が難しくなります。

この回復が難しくなる水分状態が、永久しおれ点です。

しおれてからでは遅いことがあります

畑を見ていると、作物がしおれてから水をやればよいように思えることがあります。

しかし、実際には、目に見えてしおれる前から、水分不足は始まっている場合があります。

葉が少し元気をなくす。成長が止まる。実が太りにくくなる。

そうした変化は、見た目には大きな異常に見えなくても、土の中では水分が足りなくなっているサインかもしれません。

畑の水管理では、「完全にしおれてから対応する」のではなく、「しおれる前に気づく」ことが大切です。

そのためには、しおれているかどうかだけを見るのではなく、定期的に水をやる、土の乾き具合を見る、葉の様子を確認するなど、継続的に関わることも一つの手段になります。

毎回大きな変化が見えるわけではありませんが、少しずつ様子を見ることで、水が足りなくなる前に対応しやすくなります。

人の体も、のどが渇いてからでは遅いことがあります

これは、人の水分補給にも通じるところがあります。

人の体も、水分が不足すると、体温調節が難しくなったり、体調を崩しやすくなったりします。

特に夏場は、汗によって体の水分や塩分が失われやすくなります。

のどが渇いたと感じたときには、すでに水分が不足し始めていることがあります。そのため、暑い時期には、のどが渇く前に、こまめに水分をとることが大切です。

畑で、しおれてからではなく定期的に水やりをするように、人の体も、のどが渇いたかどうかだけで判断しないことが大切です。

たとえば、起床後、食事のとき、入浴の前後、外出や作業の前後など、生活の中で水分をとるタイミングを決めておくと、水分不足に気づく前に補いやすくなります。

一度にたくさん飲むよりも、少しずつ、回数を分けてとる方が続けやすい場合もあります。

厚生労働省や環境省でも、熱中症予防として、水分補給と暑さを避けることの大切さが示されています。

高齢の方では、暑さやのどの渇きを感じにくくなる場合があります。そのため、自分では大丈夫と思っていても、体の中では水分が不足していることがあります。

高齢の方への水分補給は、声かけと環境づくりが大切です

高齢の方は、若い世代に比べて、のどの渇きや暑さに気づきにくくなる場合があります。

また、夜間のトイレを気にして水分を控えたり、暑さをあまり感じないまま過ごしたりすることもあります。

そのため、本人が「大丈夫」と感じていても、実際には水分が不足していることがあります。

ここで大切なのは、本人の感覚だけに任せきりにせず、水分をとりやすい環境を整えることです。

ご家族や周囲の方が、自然な形で声をかけたり、飲み物を手に取りやすい場所に置いたりするだけでも、水分補給のきっかけになります。

このとき、「水分をとってください」と声をかけるだけでは、受け入れにくい場合もあります。

お茶の時間やおやつの時間として誘う。会話をしながら一緒に飲む。好きな飲み物や、飲みやすい温度のものを用意する。

そうした日常の流れの中に水分補給を組み込むことで、無理に飲ませるのではなく、自然に水分をとる行動につなげやすくなります。

たとえば、

  • 時間を決めて声をかける
  • 手の届くところに飲み物を置く
  • 一度に多く飲むのではなく、少しずつ飲めるようにする
  • 起床後、食事、入浴前後など、生活の流れに水分補給を組み込む
  • お茶の時間やおやつの時間に合わせて飲み物を出す
  • 会話をしながら、一緒に水分をとる
  • 室温や暑さ指数を確認する
  • いつもと様子が違うときは早めに相談する

といった工夫があります。

水分は、多すぎても少なすぎても注意が必要です

水分補給は大切ですが、誰にでも同じ量が合うわけではありません。

心臓や腎臓の病気などで、水分や塩分の制限を受けている方もいます。その場合は、一般的な目安ではなく、主治医の指示を優先する必要があります。

また、汗を多くかいたときには、水分だけでなく塩分も失われます。

暑い時期の水分補給では、水分と塩分の両方を意識することも大切です。ただし、持病がある方や治療中の方は、自己判断で大きく変えず、医師や専門職に確認しましょう。

畑も人も、早めに見ることが大切です

畑では、作物が完全にしおれてからでは、回復が難しいことがあります。

人の体も、強いのどの渇きや体調不良が出てからでは、すでに水分不足が進んでいる場合があります。

だからこそ、夏場は「まだ大丈夫」と思っている段階で、少し早めに水分をとることが大切です。

畑の水管理を見ていると、水は多すぎても少なすぎても難しいものだと感じます。

人の体も同じように、毎日の中で少しずつ整えていくことが大切です。

暑い時期は、無理をせず、こまめな水分補給と休憩を意識しながら過ごしていきましょう。

▶たていわ病院ホームページへ

参考情報

  • 厚生労働省:熱中症の予防には、水分補給と暑さを避けることが大切です
  • 環境省:熱中症予防情報サイト
  • 農研機構:農耕地土壌の保水性や透水性に関する情報
タイトルとURLをコピーしました