飯塚の山や、街のイチョウ並木でも、秋になると色が分かれます。イチョウは黄色く、モミジは赤くなりやすいです。同じ季節なのに、なぜ同じ色にならないのでしょうか。

葉の緑色は、なぜ薄くなる?

葉が緑に見えるのは、クロロフィルという色素があるからです。光を受けて、葉が養分を作るときに働いています。
秋になると、この緑の色素は分解されていきます。クロロフィルが減って、葉の緑が薄くなります。分解された成分の一部は、枝や幹のほうへ戻されます。
黄色と赤は、出方が違います
葉には、はじめから黄色い色素も存在しています。カロテノイドです。緑が濃いあいだはクロロフィルに隠れて見えませんが、緑が分解されると黄色が表に出てきます。森林総合研究所の一般向けの説明では、このカロテノイドによる黄色い葉っぱの代表としてイチョウが挙げられています。
赤い色は、別の色素です。アントシアニンといいます。こちらは隠れていた色が出るのではなく、秋に葉の中で新たに作られます。同じく森林総合研究所の説明では、紅葉の代表としてモミジが挙げられています。一般向けの森林の生き物というページでは、この赤い色素をアントシアンと呼んでいます。
木の種類と条件で、色は異なります。柿の木のように、赤と黄がまだらになる木もあります。そしてイチョウがいつも一色、モミジがいつも真っ赤とまでは言えず、そこには差があります。
色づくことと、葉を落とすこと

色の変化は、多くの場合、葉が落ちる前に起こります。葉の柄と枝のあいだには、離層と呼ばれる薄い細胞の層があります。ここの細胞が壊れると、葉は自然に落ちます。
赤い色素については、長いあいだ、こんな説明が伝えられてきました。秋に離層ができて、葉で作った養分の通り道が塞がれ、行き場を失った糖からアントシアニンができる、というものです。森林総合研究所の一般向けページにも、この流れの説明があります。
ハウチワカエデの調査でわかったこと
2026年4月13日、森林総合研究所は、ハウチワカエデを調査し、別の結果を報告しました。
研究では2020年の夏の終わりから11月初めまで、葉の栄養分と赤い色素、葉の柄の離層を追いました。離層の細胞が崩れ始めたのは、10月上旬でした。赤い色素の合成と、糖の増加は、それより前に始まっていました。
葉の中の窒素は、離層が発達したあとも減り続けました。これは、葉と幹のやり取りが継続していることを示しています。葉で作った養分を枝や幹へ運ぶ管を、師管といいます。この師管は、葉が落ちる直前まで働いていました。
少なくともこのハウチワカエデでは、離層の発達と紅葉は、別々の仕組みで進んでいました。通り道が塞がれたから赤くなった、という説明は、この木には当てはまりませんでした。論文では、赤い色素の出方は日当たりで違い、離層が進む季節のパターンは、日向と日陰で同じだったとされています。
すべての紅葉が、これで説明できたわけではありません。イチョウの黄色についても同じ仕組みなのかも、この研究の対象外です。
普段見ている黄色と赤には、隠れていた色素によるもの、秋に新しく作られる色素によるものといった違いがあります。少なくとも今回調べたハウチワカエデでは、離層が発達して養分の通り道が塞がれたために、赤くなったわけではありませんでした。ただ、街路のイチョウと、山のモミジを比べるとき、色の話のその先には、まだ、木ごとに異なる可能性が残っています。
参考情報
- 森林総合研究所「森林の生き物 Q3 紅(黄)葉のしくみ」
- 森林総合研究所「秋の紅葉は、落葉させる『離層』が発達する前から始まっている」(掲載日2026年4月13日。対象は札幌のハウチワカエデ。調査は2020年8月末から11月初旬)
- 矢崎健一、張春花、安部久、北尾光俊「Timings of leaf abscission, nitrogen resorption, and autumn coloration across contrasting canopy positions in Acer japonicum」Trees, Volume 40, article
